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永田町通信 9
 

『疑心暗鬼の総裁選』

 3月26日、平成13年度国家予算が成立した。国家経済の下支えの役割りをはたす予算成立は、至上命題であっただけに、与党の一員としてホッと一安心。しかし、予算執行に必要不可欠の関連法案の成立には、衆参両院においておよそ二週間を要するため、4月6日まではまだ緊張感は続く。

 そんな国会運営を横目に見ながらも、いよいよ政局に突入した。森総裁が自民党大会において言明した「自民党くり上げ総裁選」の行方である。今や株式市場も自民党員も、何よりも野党の皆さんの最大の政治的関心事は「いつ」「誰が」自民党の総裁となり、次の総理大臣となるか、である。

 こうなると「事実上の退陣表明」をした(と暗黙の了解)森総理の心中やいかばかりか、と察せられる。しかし、「いつ」「どのような方法で」くり上げ総裁選を行うかの最終決定権は、誰であろう、森さん自身の手の中にあるのだから、ここで的確に口を出しておくことによって総理を辞めた後の政治的発言力を確保できるか否かが全く違ってくる。今年まだ64歳の成熟練達の政治家として、内政外交に一家言持ち続けるためにも、正念場に差しかかっている。このまま「失言、放言、ゴルフで辞めさせられた唯一の総理」として後世に名を残すのか、「改革に道筋をつけ、身を賭して政権の安定を守り抜いた総理」と評価されるかの瀬戸際なのだ。

 さて、「いつ」行われるかが最初のポイント。予算関連法案の成立する4月6日の夜が退陣表明のタイミング。その後も国会は開会中であり、政治的空白をできる限り避ける意味においても、一、二週間の期間は必要と判断されるはず。となると、早くて4月13日、遅くとも4月20日には両院議員総会において新総裁が選出され、その後数日内に国会において新総理が決定、新内閣発足、となる。

 次に「どのように」選ばれるかだ。自民党規則通りであれば、候補者が一人ならば、両院議員総会において「異義ナシ!!」で決まる。二人以上の候補者がいれば、国会議員全員と47都道府県代表の投票によって決まる。しかしこれでは「開かれた」「全党員の意思を反映した」総裁選とはならない。この点におけるポイントは、いかにして地方票を増やし、永田町の派閥論理だけで密室で決まることのない総裁選のやり方を採用するかである。

 アイディアは三つある。
1.都道府県票を三票に拡大する。(女性局と青年局票の上乗せ)

2.都道府県の全党員数を一万で割った票数を与える。(石川県に五万人の党員がいれば、五票となる)

3.小選挙区毎に一票を与える。(計300票)

 さらに重要なことは、予備選を容認することである。私の地元石川一区の自民党支部などは全国でも類例のない予備選を考えている。紐野義昭支部長(県議)によるとこうだ。

 「馳さんの一票は、支部の予備選の結果に従ってほしい。あなたは自民党公認として金沢市選挙区から選ばれた代議士。ならば、有権者の大多数の意思である予備選の結果に従うべきだ。」・・・私はグウの音も出ず、
 「そ、そうですねぇ・・・」と答えるしかなかった。

 「いつ」「どのように」という方式が確定するのをにらみながら、有力候補者自身やマスコミの主張はゆれている。

 「変革の人、小泉純一郎か」「連立与党の安定感から野中広務」「行革推進から橋本龍太郎か? 橋本派の結束力も保てるしネ」「世代交代で平沼赳夫?!」「いやいやそれなら40代から石原伸晃を!」「人気の目玉は田中眞紀子!」「女性なら野田聖子もいるぞ!」「いっそ立候補要件(推薦人30人)を緩和して、出たい人は誰でも出られるように!」などなど、いずれも観測気球の域を出てはおらず、帯に短しタスキに長し。

 ただ、「永田町のタヌキおやじが料亭の密室協議で後継指名や調整することだけはするな」「派閥論理で決めるな」「自民党の体質が嫌なのだ。公開討論をやり、政策実行力のある、本格政権で日本の危機突破力のある人こそ、リーダーに」というサイレントマジョリティの声を反映させなければならないという筋論を、私は通したい。 


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