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永田町通信 7
 

『一言多い!?』

 石川県防衛協会の新年会に出席したときのできこと。県民の防衛意職を高め、自衛隊の日頃の活動を支援する諸団体のまとめ役の役割りを持つ防衛協会の新年会は、正面にどっか−んとでっかい日の丸(国旗)が掲げられている。会場に案内され、まず国旗に一礼してから指定されたテーブルの前に立つ。

 開始時間が迫るにつれて続々と出席者が参集し、それぞれに輪を作って歓談している。

 こういう時に、顔見知りの人を見つけて図々しくもその歓談の輪の中に違和感なく入って行くのが政治家の基本的才能(?)。近所のよもやま話しからKSD問題までをネタにしながら日頃のご支援に感謝し、明確に支援をしていただいていない方に対してはとりわけ積極的に声をかけ、できるだけ敵を少なくするように心をくだくのも政治家のつとめ。

 そんなこんなしているうちに開会となり、主催者、来賓のあいさつと進行。

 私はこういう新年会であいさつをするときはいくつかのポイントをおさえておくように留意している。

 まず、話しをコンパクトに、できるだけ短かくすること。宴席での長広舌は、一番嫌われるからだ。それから、その会場内で見つけたネタを入れること。出席者の関心をひくことで、スピーチを印象付けるためだ。そして何より、声を大きくゆっくりしゃべること。

 この日も何かネタはないかとさがしていた。防衛協会という性格上、どの新年会よりもでっかい日の丸をネタにしよう、とはすぐに頭に浮かんだ。ヴィジュアル的に誰の目にもわかりやすいし、国防意識を強調するには最適。

 そこで、その会場内にいる有名人が、日の丸に対してどういう姿勢を示すか、をスピーチのテーマにしようと決めた。

 一人目。防衛協会長の宮太郎さん。経済界の重鎮でもあり、型破りなスピーチで有名。谷本知事の後援会長にして最大の後見役。名前を呼ばれてそそくさと壇上に上がり、用意されたペーパーを読んで、終わるとそのまま引っこんできた。アレ?行きも帰りも日の丸を無視しちゃったゾ!!

 続いて谷本知事。左手首を骨折して首から吊っている。小走りに壇上に駆け上がり、いつもの早口でまくしたてると、そのまま降りて来た。アレ、やっぱり日の丸は無視。

 続いて山出金沢市長。おっとりとマイクの前に立つと、自衛隊の日常の活動に深い理解と感謝を示すスピーチ。さすが文化と歴史の金沢を代表する市長。しかし、やっぱり行きも帰りも日の丸を無視。

 私は、拍子抜けするとともに、自分がこんなに日の丸に注目している方がヘンなのかな?と自己嫌悪になった。でも、でも一言言いたい。こんなんで良いのか!!

 それで、来賓あいさつらしからぬこんなスピーチをしてしまった。
「宮会長も谷本知事も山出市長も、誰一人としてこの壇上に上がって来るときもテーブルに戻るときも日の丸に対して一礼をするという敬意を態度として表さなかった。私は問題提起をしたい。三人とも石川県のリーダーである。日の丸が掲揚されていれば、立ち止まって黙礼し、敬意を払うのがリーダーとしてあるべき態度ではないか?!」拍手が起きた。

 宮さんも谷本知事も山出市長も、私が話しを進めるうちに語気が強くなると、苦笑いしながら下を向いてしまった。

 私は内心、言いすぎたかな、満座の席で人生の大先輩に恥をかかせてしまったかな、無礼な物言いだったかな、と反省したが、一言言わずにはおれない心境だったので、スピーチ後も三人にちょこんと頭を下げただけで何も直接話さなかった。

 私の次の奥田さんは、その場の空気が凍りついてしまったのを察してか、国旗国歌法制定時の政治的議論を持ち出して、
「日の丸に対しての姿勢を強制するのはいかがなものか。内心に留めておくべきもの。」とチクリと私のスピーチの気まずさをいさめると共に、宮さんや知事や市長の体面を保つ言い方をした。奥田さんと私は政治的ライバルだが、お互いにああ言えばこう言うというあうんの呼吸の役割分担もできていて、このときは奥田さんが私をうまくフォローしてくれた形となった。この場はこれでうまく収まったからそれで良いのだが、でも、私はどうしても言わずにはおれない。日の丸がそこにあれば、静かに一礼して敬意を払う態度こそが、国際人としての常識ではないか、と。


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