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永田町通信 3
 

『日教組になぐり込み?!』

 『小此木さん、一度日教組の本部に行こうよ。こちらから腰を低くして政策懇談会を申し込めば、向こうさんもそんなにかたくなな態度には出てこないでしょう』

 そう私が提言すると、小此木八郎代議士は一瞬言葉につまりながらも『・・・ん・・・おもしろいね。行ってみようか!』と答えた。

 かくして小雨降る秋の午後、私ははじめて神田にある日教組本部を訪ねた。メンバーは『21世紀の日本の教育を創る会』座長の小此木さん、事務局長の世耕弘成参議院議員、そして私の3名。『21世紀の日本の教育を創る会』は、自民党若手国会議員による教育改革を推進する文教族の集まり。当面森総理も目指している奉仕活動の義務化、を学校教育の現場において実現することを目的としている。そのことも含めて、教育現場のいくつかの問題について政策懇談会をしましょう、と呼びかけたわけだ。まず腰を軽くして行動しよう、ということ。

 日教組側は面くらったようである。自民党とは犬猿の仲。その自民党の若手文教族がわざわざ足を運んで『勉強させて下さい』と言ってくるのであるから、その真意やいかにと身構えるものも当然。

 私たちは6階フロアを占領している日教組本部事務所にたどり着いた時、胸の高鳴りを覚えた。招かれざる客なのだから、白い目で迎えられるのかと思いきや、そうでもなかった。むしろ『どうぞ、どうぞ!』と応接室に案内していただき、おいしいお茶まで出していただいて『おお!日教組のお茶を飲んでいるぞ!俺たちは』などといちいち感激した。

 さて、奉仕活動の義務化、という文言に中央執行委員の皆さんは敏感に反応した。『そもそも奉仕活動というのは自主的に行うことではありませんか?それを義務教育の中で強制的に行わせるというのでは本来の趣旨と外れてしまうのでは?』

 『そうは思いません。義務教育において学ぶべき人間教育の一環として、奉仕活動を全児童、生徒が体験することは、生きる力を身につけるうえで必要不可欠と思います。自主性、連帯性、継続性、無償性を学ぶには、学校行事の中に体験学習として位置付ければ良いのではないでしょうか?』

 ・・・どうも日教組は『奉仕』や『義務』という言葉に敏感なだけあった。『奉仕』を『体験学習』と言い換え、『義務』を『学校行事として位置付ける』ということについては抵抗せず、口をつぐんでしまったのだから。お互いに目指すべきところは同じようである。

 また、少人数学級の実現について私が、『これは都市部周辺の教育環境の悪化とリンクする問題です。住宅開発やマンション、アパート建設の増加の末、新住民が増えた。こういう地域は新旧の住民の心が一体化されていないので、学校現場においても教員が十分に子どもたち一人一人に対応しきれなくなっているということです。それを考えれば、都市部における少人数学級の実現も、弾力的に実行しても良いと思います』

 と今までの自民党の政策から一歩踏み込んで発言すると、執行委員の一人は『そうなんです。私たちも現場の声として、地域の教育力が薄れている都市周辺部における教育環境を充実させるためにも、少人数学級の必要性を主張しているのです。それに小学校1年生だけでも、30人以下学級をしていただけないかとも思うんです。まだ集団生活になじんでいない低学年の子どもたちを、いすに座らせて授業を受けさせるのは大変なことなんです。そういう現場の声を政策に反映していただければ』

 何やら、政策で対立する日教組と自民党という図式ではなく、どうしたらより良い教育を提供していけるだろうか?の教育談議になってきた。当初は1時間の予定だったのが、話がはずみ2時間近くおじゃました。帰りぎわに『今度は自民党本部で我々の会合を行いますから、その時は日教組代表として来ていただけますか?』とお願いすると『・・・私たちは大きな組織ですから、私どもの一存ではちょっと・・・』との返事。しかし数日後に『皆で協議しましたところ、ぜひうかがわせていただきます』とのこと。

 政治の現場とは、おもしろい。川をはさんで闘い合うことがあっても、お互いに渡ろうと思えば意外と簡単だったりするということ。我々も、日教組をより知ることにより、日本の教育環境改善のための努力を積み重ねたい。 


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