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永田町通信 2
 

『外交は多チャンネル時代』

 臨時国会終了翌日の8月10日、ソウルに行って来た。目的は『バクダンの会』。

 『バクダンの会』とは日韓の若手国会議員有志による交流会。たまたま2年前の第1回の夕食会で、交流の証しに、とバクダン酒(ビールのウイスキー割り)を酌み交わしたのがこの名前の始まり。韓国の接待は、バクダン酒でベロンベロンに酔っぱらって、胸を開いて本音で語りあうところから始まる、とも言われている。郷に入っては郷に従え。我々日本人も韓国に行ったらその地のならわしに従いましょうということで、以来、訪問するたびにバクダン酒の洗礼を受けてノックアウトされているのである。

 そもそもこの会を立ちあげた理由は3つある。
 1つは、外務省や大使館を中に入れないで両国の国会議員が直接対話をしようということ。
 2つめは、30代の戦後世代の国会議員同士の交流の場を作る必要があるということ。
 3つめは、21世紀の日韓関係を、我々がリードしようということ。

 1つめの外務省や大使館をなぜ入れないかというのは、『政府』や『国家』という大上段の立場をふりかざしてしまうからだ。当然国会議員である以上は国益に沿って外交現場に出かけなければならない。そんなことは百も承知である。しかし、外交官が間に入ってくるとどうしても「色メガネ」をはめられてしまって、人間くさいつきあいが出来ないのである。カミシモを脱いで、同世代の感性を共有する友人として、率直にあらゆるニュースについてふみこんだ話し合いをする場合は、外務省からのブリーフィングは時として不要なのである。とりわけ戦争を知らない世代の我々にとって、お互い、時として過去の歴史を前提に議論をすることは、体験がないだけに戸惑いが優先する。そういう固定観念や思惑なしに、オフレコで言い合おうというのがバクダンの会の主旨。今回の訪韓で3回目となるから、両国のベテラン政治家やマスコミからも注目を浴びる存在となってきた。

 今回の討論のテーマは「政治改革」。

 韓国では、地域政治、財閥政治、縁故主義という言い方をするそうだ。地域や財閥の権益を守るがために、ボスが絶大な人脈や権力を握って資金集めをし、政治を牛耳っていることが、政治家の汚職や腐敗を助長しているというのだ。つまり、これを日本にあてはめればまさしく派閥政治、政官業のゆ着ということになる。

 韓国の4月の国会議員選挙では、政治改革派の民主党議員が躍進した。日本でも6月の総選挙で都心部において若手議員を中心に民主党が伸びた。この現状を踏まえて、国民の期待に応える政治をどうやって行っていこうか、との話し合いがメーン。

 韓国側の若手リーダーであるキム・ミンソク議員の主張は「派閥主義、地域主義、縁故主義なるものからの脱却が政治改革。今後は政治家同士の政策ネットワーク構築が必要」

 これに加えてハム・スンヒ議員からは「アジア的な価値観(集団主義、年功序列)が経済危機を招いた一因ではないか。長いものに巻かれろでは政治家としての仕事はできない。むしろ日本や韓国の過去の精神風土である武士道精神や学者精神などの精神的な価値が見直されるべきではないか」との指摘があった。

 私は「究極的には世代交代。候補者選びの段階において、清新で有能な人物をどうリクルートできるかだ。そして国会活動においては、官僚依存からの脱却。議員立法の強化が必要」と発言し、賛同を得た。

 また、21世紀の日韓関係というテーマの議論では、チャン・ソンミン議員の意見に一同が納得した。

 「両国の政治家同士の人脈の断絶が心配である。公式・非公式の人脈のチャンネル不足は問題解決能力をせばめる。人間的な親しみの拡大とともに、政治家同士のネットワークの拡大が今後の課題。我々バクダンの会のメンバーはいつでも電話一本、ファックス一枚で連絡を取り合える仲でいよう」

 両国の長い歴史、近現代の不幸な一時代を振り返れば、今成すべきことは、直接対話のつみ重ねによる相互理解。

 その結果として、日韓の『新しい求心力』となるような政治目的を共有し、健全なパワーゲーム(緊張感)を維持することが、我々の世代の役割りではないかと思う。 


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