馳浩の永田町一筆勝負54
動物虐待が器物損壊の罪?
平成10年4月25日掲載


 立法府にいると時々目がテンになるような法解釈にめぐり合うことがある。現在自民党内で議論している「動物愛護」に関する法律について関係省庁から話を聞いていたら、まさしく目がテンになってしまった。
 
皆さんが所有しているペットが、他人によって故意に傷つけられたり虐待されていることが判明したとします。その犯人が見つかり警察によってとっ捕まえられる時、罪状はこうなります。刑法第261条に照らし合わせて、器物損壊等の罪となるのです。ちなみに条文を抜き出してみましょう。「第261条−他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料に処する」とあります。この条文に適合されるのですって。

 チョット、変、と思いません。だってあなたのペットや私が可愛がっているピッコロちゃん、マーブルちゃん(ともに猫)がモノとして扱われているんですよ。あんなに愛らしくて心許せる親友が、モノ、器物なんですよ。

 ましてこの刑法第261条を読んでおわかりのように「他人の物」ではないペット(これを無主物=むしゅぶつ=と法律用語では言う)や、自分が飼って(所有して)いるペットを虐待したりぶっ殺したりしても、その行為を罰する刑法上の条文は、ないんです。

 これって、ますますヘンだと思いません。
野生の動物をナイフで刺し殺したりけっとばしたりしても何の刑法上の罪にも問われないんですよ。自分が飼ってる池の鯉を面白がって壁に叩きつげたりウサ晴らしにフライパンで猫をあぶっても罪に問われないんですよ(せいぜい「動物の保護及び管理に関する法律」13条で3万円以下の罰金に処せられるだけ)。ま、私の紹介する実例が極端であるとしても、全国にたくさんある許認可を受けていない私設動物園の動物が劣悪な環境下に置かれていたとしても、それはひとえに所有者の責任問題ということであって、動物愛護団体などが法律を根拠にして注意したり改善措置を行政が強要したりすることはできない、ということなのであります。

 これって、やっぱりヘン。そこで、自民党環境部会(鈴木恒夫部会長)では、動物愛護に関するワーキングチーム(杉浦正健座長)の中で、何とかして適切な法的なワク組を作ることができないだろうかと検討しているのです。そこで、既存の「動物保護法」の罰則を強化したり、保護対象動物を広げたり、さらには「動物愛護法」とか「動物虐待防止法」とかを立法化して、虐待されている動物たちを広く守っていこう、そのための理念法、基本法を作ろうじゃないか、ということです。

 現代社会において、ペットとなる動物たちは私たち人間の仲間です。心の友です。そんな気持ちで、心豊かに付き合いたいものです。

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