馳浩の永田町一筆勝負53
“戦友”が酒酌み交わし「ありがとう」
平成10年4月18日掲載


 4月16日の夜、永田町のとある中華料理屋で参議院・対外経済協力に関する(略・ODA)小委員会の打ち上げ会が会費制で行われた。昨年の10月末からおよそ6ヶ月間、計11回の小委員会が開催され、このたび最終報告書が参議院に提出されたことをねぎらうために板垣正委員長(自民・比例)の主宰で委員全員が集まったのである。最初は板垣委員長から「僕がごちそうするよ」との申し出があったのだが「会員制の方がみんな好き勝手に飲んで騒いでしゃべりやすいから」という理由でそれぞれが会費を払うことになった。

 宴もたけなわのころ、上田耕一郎委員(共産党・東京)が杯を持ってご機嫌な調子でテーブルスピーチを始めた。おっ、珍しい。

 「今日は、参議院・国際問題に関する調査会の村田悠紀夫(自民・京都)会長にもおこしいただき、与野党の全メンバーが同席の上で打ち上げ会をできますことを感謝したいと思います。私は今年の夏で引退し、去りゆく身でありますが、最後にこの小委員会で日本の国際貢献について意義深い討論をし、超党派で報告書をまとめることができたことは何よりの喜びです。とりわけ、ODA基本法の必要性について大多数の合意がなされ、その骨子案のたたき台まで提出することができたのは長い参議院の歴史の中でも画期的なことです。この合意案を、これからは若い世代の山本一太さん(自民・群馬)や馳さんたちが具体化(法案化)のために引き続き汗を流されますことを祈念致します。各党執行部、あるいは外務省などからさまざまなご意見のある中で、これほどまでに見事に報告書をまとめられましたのはひとえに板垣委員長のリーダーシップのおかげです。本当にありがとう」

 私はこのスピーチに上田氏の人柄を見た。日ごろは安全保障問題でほっとけば1時間でも2時間でも前記調査会のフリートーキングで論争をしているのが自民党代表の板垣氏と共産党代表の上田氏。そして、上田氏と板垣氏とは左と右の全くかけ離れたポジションに位置する政治家同士。それがこうして隣席で酒酌み交わし、「いやー本当にありがとう」と肩叩き合っているのだから、政治とはダイナミック。お二人とも今年の7月で引退する身であるだけに、万感胸に迫るものがあるのであろう。犬猿の仲と自他共に認める理論派の代表がそろっての笑顔だけに、1年生議員の私からすればうらやましくもまぶしい歓談風景でもあった。板垣委員長は「この報告書は私の遺言だよ」と笑ってスピーチされてもいた。

 もう1つこの小委員会をやった成果は、委員同士のディベートが活発だったことと、その議論を事務局が的確に文書にしてまとめて下さったこと。議員相互のディベートによるやりとりは緊張感と中味があって「これぞ議会」って気分。今後ともあらゆる機会に小委員会の場でディベートが実現されていくことが参議院の活性化につながるであろう。
 
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