馳浩の永田町一筆勝負50
環境ホルモンの実態を解明せよ!
平成10年3月28日掲載


 1996年、アメリカで出版された一冊の本が世界的に反響を呼んだ。日本では『奪われし未来(邦題)』と邦訳され、翔泳社より出版され、たちまちベストセラーとなった。

 まだ読んでいない人は、是非読まなければならない。副題に『人類はもう子孫を残さない』とシッキングな言葉。何事が起こっているのかとびっくりしながら読み進んだ人の誰もがたちまちのうちに深刻な表情になってしまうだろう。いや、深刻にならなければならない大問題が提起されているのである。

 まず環境ホルモンとは何か、が書かれている。正式には、内分泌かく乱化学物質のこと。

 人工的に生成された化学物質が、生物の体内に取り込まれ、偽のホルモンとして作用し、異変を起こしているというのである。研究リポートによると、精子減少、不妊の増加、生殖器の異常、性行為の異常(レズビアン、セックスレス)に止まらず、免疫力の低下、脳や神経系にも働いて、多動症(落ち着きがなく常に動きまわる症状)や精神遅滞にまで行動異常をもたらしているのではないか、との指摘がなされているのである。疑わしい化学物質として、ダイオキシン、PCB、DDT、ビスフェノールA、DESなどなど。いずれも今世紀中に人類が生み出した化学物質である。

 今国会の首相の所信表明においても橋本総理大臣は環境ホルモン問題に言及し、早急に取り組まなければならないと、非常ベルを鳴らしている。

 実は自由民主党においても、環境ホルモン問題小委員会をつくり、できる対策から始めようという目的で勉強会をスタートさせた。3月25日の朝8時から第1回勉強会を開いた。ちょうど『奪われし未来』の著者の一人、化学、環境ジャーナリストのダイアン・ダマノスキ女史を党本部にお招きして講演会と質疑応答を行った。私はこの小委員会のまとめ役である委員長を拝命している。国会議員になって3年間、ずっと環境問題(アセス法、大気汚染防止法、エコビジネス振興など)に取り組んでおり、この環境ホルモン問題への対策には率先して取り組まねばと張り切っている。

 ダマノスキ女史の指摘により、日本の政治家、国会が果たすべき役割がいくつか見えてきた。

 まず、環境ホルモンの実態解明、因果関係を実証して行くために環境庁を中心にして研究体制を拡充して行くこと。

 それから、産業界、医療関係者、科学者、政治家、行政など関係者が一堂に会するフォーラムの設置。そして国際的な情報交換の場を設置。最終的には、化学物質の法規制も視野に入れるということだ。

 全体像がつかめない問題だからこそ、緊急に対応しなければならない。

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