馳浩の永田町一筆勝負49
忘れるな!阪神淡路大震災
 平成10年3月21日掲載 

 

 災害は忘れた頃にやって来る。備えあれば憂いなし。日本には古来こんなわかりやすいことわざがある。

 日本は地震の多い国。また毎年定期的に台風が襲来し、洪水や津波、土砂くずれなどでたくさんの被災者を出している。
 対策はいくつかある。

 事前に災害を予知して被害を最小限にくい止める方法。

 災害に強い国土、治山、治水、河川、道路事業、都市計画などで整備しておくこと。

 災害が起きた時に緊急対策をすること。

 そして、被災者や被災地域の復興対策。

 この4項目どれも大切なことであるが、今国会で問題になっているのが、災害被災者支援のための個人補償である。対象はもちろん阪神淡路大震災。

 私は災害対策特別委員会に所属したばかりで詳細な議論にはまだ参加したばかり。しかし、震災直後から関係者の要望をヤマのようにいただいており、問題点は把握している。

 いかにして、震災被害者に生活再建資金として個人補償金を支払うことができるか、それを公的資金として出せるか、その根拠となる法律をつくることができるか、ということである。

 これまで復興のために総額4兆3600億円の予算措置をしている。が、これらはインフラ整備である。道路、港湾、仮設住宅などであって、個人の生活基盤を支えるための補償金は、一時見舞金以外は支払われていないのである。

 しかし、一時見舞金だけではとても足りない。そこで、法律をつくり、個人補償金を出せないか、と頭をひねっているのだ。

 財源があれば出せる。しかし一体どこにあるのか、一人あたりいくら出せるのか、を考えているのである。また、法律をつくる時のポイントとして遡及措置(さかのぼって通用すること)がむずかしいということである。つまり、今後発生するだろう災害被災者に対しては通用することができるとしても、3年前の阪神淡路大震災の被災者のみにさかのぼって新しくつくる法律(仮称、災害被災者等支援法)が適用され難いということ。

 この<財源><遡及措置><公的資金で個人補償が可能か>という問題点を整備しなければならないのが政治の役割である。

 国会には2つの議員立法が現在野党より提出されている。また、知事会案を受けて与党自民党を中心にまとめられた基金の運用益による支援法は現在党内で調整中である。計3本が議論の対象となって久しい。

 財源のやりくりを何とかして、これらの法案を一本化できないかと与野党の幹部が頭をひねっている。忘れた頃にやってくる次の災害を待ってはいられない。備えあれば、憂いなし、が国民の本音である。あの大震災を忘れてはならない。

一筆勝負INDEXへ