馳浩の永田町一筆勝負48
町村(文部大臣)vs谷垣(科技庁長官)
2人の出世レース楽しみ
平成10年3月14日掲載



 参議院では第141回通常国会から委員会を再編成した。私の所属するのは、文教・科学委員会。前国会までは文部省行政を所管する文教委員会と科学技術庁行政を所管する科学技術特別委員会とに分かれていた。それを、今般の行政改革、省庁再編を先取りしてドッキングさせたのである。文教科学技術省が将来できることをにらんで、今のうちから参議院では一括して審議の場を作ったということだ。

 ところが、のっけから1つの問題が起きた。

 今までは2つの委員会に分かれて審議していたものが1つになるわけであるから、物理的に考えても審議時間が足りないということだ。3月12日に、大臣所信表明に対する一般質疑が行われた時のこと。町村文相谷垣科学技術庁長官が肩を並べて答弁に立つこと自体、今までにない新しい風景であるのだが、質問がどうしても現下の教育問題に及ぶために町村文相中心に委員会が展開してしまうのだ。ということは当然となりに座っている谷垣長官は手持ちぶさた。時折先日失敗したH2ロケット打ち上げの問題や科学技術政策の今後の重要性などについて質問されると張り切って答弁なさるのだが、どうも出番が少なくてお気の毒。両雄並び立たずという雰囲気も手伝って、これはちょっと今後の委員会運営の問題点として残りそうな気がした。

 それはそうと、両大臣とも次代の総理大臣候補であることに誰も異論はないだろう。若くて実績も十分で弁も立つ。町村文相は旧三塚派中堅議員のトップランナーだし、谷垣長官も旧宮沢派において同じ立場。2人とも選挙地盤もしっかりしており、向こう15年ぐらいは間違いなく国会で活動を続けられる活力も政策ブレーンもある。支持する仲間も多いし敵も少ない。

 何よりも頼もしいのは、官僚の用意した答弁書を参考としながらも、ほとんどは自分のことばで、質問者と目を合わせて議論をされているところである。これがあたりまえのようでいてなかなかできることではない。

 専門的、事務的な問題についてはどうしても役所の用意した資料に頼らざるを得ないのだが、2人共よっぽど理解力がはやいのだろう。棒読みで答弁書をなぞるだけなら小学生でもできる。パッ、と瞬間的に資料に目を落とすだけで、後は堂々と所見を述べたり予算や法案の要点を説明に入るのである。

 2大臣を拝見していて次代のエースと呼ばれるのはむしろもったいないと私は思う。クリントン大統領でさえ40代で大国アメリカの実権を握っている。

 ポスト橋本に2人が名乗りを上げてこそ、日本の政界に突破口が開かれると感じるのは私だけだろうか。文教・科学委員会で肩を並べる2人の出世レースが楽しみである。
 
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