馳浩の永田町一筆勝負43
国会議員にも育児休暇を!
女房から”助けて”電話
平成10年2月7日掲載



 今週の木曜日午前11時。まるでこの世の終わりを感じさせるような泣き声で議員会館の私の事務所に電話が入った。声の主はうちの女房、高見恭子さん。

 『どうしよう。ベビーシッターさんが家に来ないのよ。どうしよう』

 声はふるえている。聞くと、ベビーシッター派遣協会のうちわの連絡ミスで、午前10時30分にくるはずのシッターさんが来られないというのである。高見恭子さんは毎週月曜日から木曜日まで東京エフエムのラジオ番組『アフタヌーン・ブリーズ』のレギュラー司会者をつとめている。生放送。時間は正午から2時まで。いつもなら事前打ち合せのために局入りしているはずの午前11時にまだ自宅にいて鈴音(りおん)ちゃん(生後7週間)におっぱいをのませながら途方に暮れているのだ。

 こりゃ困った。乳呑み児かかえてスタジオ入りさせるわけにもいかない。
 『とにかく国会事務所に連れておいで。番組が終わるまで面倒見るから。急いでおいで』と連絡した。

 それから30分後。参議院議員会館の正面玄関で私の秘書に鈴音ちゃんとおでかけセット(おしめ、ミルク、タオル、など)を渡し、半ベソをかきながら恭子ちゃんは本番ギリギリにスタジオ入りした。

 いつもは陳情者や官僚でごった返す私の事務所は、突然託児所に。次から次へとブリーフィングや打ち合わせや面談希望で来客が絶えないにもかかわらず、私はおしめを替えたりガラガラであやしたり、だっこしたりの大騒ぎ。幸いにも秘書の女の子や小野清子議員(東京)が助けに来てくれて面倒を見ていて下さり、鈴音ちゃんもごきげん。そうこうするうちに生放送を終えた恭子ちゃんがニコニコと迎えにやって来て事なきを得たというわけ。

 両親ともに身近にいない私たち夫婦は共働き。こんな家庭は世間にゴマンとあることだろう。今回のような事態は、それこそ日常茶飯事なのかもしれないが、みなさん一体どうやってしのいでいるのだろうと考えた。

 文教科学委員会のメンバーには女性議員が多い。公明の松あきらさん、自由党の扇千景さん、共産党の阿部幸代さん、自民党の小野清子さん。それぞれお子さんを育てあげて現在の要職にある人たちばかり。雑談の中で『いやー、国会の中で子守りすることになろうとは思いませんでしたよ』と切り出すと、みなさん口々にアドバイスして下さった。

 『馳さん。いい機会だから育児休暇とったら。国会議員でそれも自民党議員が育児休暇とったら、そういう思いしている若い夫婦たちの見本になって国民は喜ぶわよ』さて、どうしよう。

一筆勝負INDEXへ