連絡ミスで
『虎踏んじゃったよ』

<11月15日デイリースポーツ掲載>


『いやぁ参った。虎踏んじゃったよ』。
 いやぁ参ったと発言したのは町村文部大臣。

 虎というのは片山虎之助参議院議員(岡山)。

 事の起こりは11月11日夕方5時、参議院第一委員会室。この日は財政構造改革法案について各党委員から総理をはじめ各閣僚に対して質疑応答が行われていた。ところが夕方5時前に急に閣僚たちがそわそわしはじめ、5時ちょうどに橋本総理と小渕外相が席を立ったのを合図にそれっとばかりに他の13閣僚までが席を立っていなくなってしまったのである。呆然とし、アッケにとられる委員たち。だって答弁する政府側の席が一部閣僚を除いてガラガラになってしまったのだから。事情が呑み込めない自民党の委員会理事、片山虎之助議員が
「どうなってるんだ。政府のこの法案に対する緊張感がまるでないじゃないか。けしからん!」と激怒したのも後の祭り。閑散とした委員会室に力ない質疑応答が続いたのである。

 実はこの事態の責任者は村岡官房長官。この日は夕方から、訪日中の李鵬首相を歓迎する迎賓館での一連の行事に出席するため、当初から総理と外相は午後5時から委員会の席を外すことは参議院側に対して官邸から伝えられていた。ところが急拠、他の閣僚も行事に出席することになったのだが、そのことが伝えられなかったのである。

 委員会での大臣への質問事項は前日までに政府側に通告しておかなければならないことになっている。通告しておいたにもかかわらず、当該大臣が答弁せずに、ましてやその場にもおらず、局長レベルの政府委員が答弁するのではしまらないことはなはだしい。だって政府の最終責任者は各大臣、総理なのであるから、責任のない者がいくら説明答弁をしていても、質問者を納得させることはできまい。片山理事が怒ったのもあたりまえのことで、官邸側に対して二度とこのような連絡ミスがないよう謝罪と善処措置を求めることになったのである。普通、政府与党一体の議員内閣制であるから、自民党側から身内である政府に向かってこんな厳しい意見を言うことはあまりないのだが、日頃委員会中居眠りしている(ように見える)閣僚やヤジを飛ばす閣僚がいて品位が足りないため、こらしめのためにもあえて注文をつけたのである。

 これを受けて翌12日午後2時。再開された委員会冒頭で村岡官房長官が異例の陳謝を委員会に対して述べることでケリはついた。

 町村文相は、委員会後、校長先生にしかられた時のような表情で『虎踏んじゃったよ』と我々の所にやって来てテレ笑いしたというのが事のてん末である。
しっかりしてよ、もう。
                        
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