政治家も哲学を磨く時代

<11月1日デイリースポーツ掲載>

 
 国会議員は『読む』ことがその仕事の3分の1を占めている。各省庁から配られる資料、陳情書、新聞、政策関連の書籍など。橋本首相も毎週のように赤坂の書店に通い、図書館代わりに使っておられる。私も時間の許す限り書店を歩き、立ち読み(主に目次読み)をしながら世の中の流れを把握するように努めている。せちがらい毎日の中で本に囲まれている時だけが心落ち着かせられる時でもある。沈思黙考する時間あってこそ明日への活力もわいてこようというもの。

 そこで私をはじめ有志4議員で『政治改革を実現するための読書の会』というのを立ち上げた。巷間(こうかん)言われる政治改革は制度いじりや政治資金のあり方をばかり議論すれば良いというものではない。政治家の哲学こそ改められてこそ国民から信頼を得られるのであるとの趣旨である。

 会員は、長峰基(宮崎)北岡秀二(徳島)橋本聖子(比例)そして私の4人。いくつか議連がある中でこの会の特徴としては、議員秘書も議員と同列に扱って参加してもらうようにしたこと。日ごろ議員を支えてくれている秘書たちとも、一つのテーマで腹を割って話し合ってこそ、議員の謙虚な姿勢も身につくということである。

 活動内容は、毎月会員のすすめる一冊の本を全員が(自分の金で)購入して読破。そして決められた日に食事でも取りながら、その本について議論を戦わせ、その記録を残しておいて年に一回まとめるというものである。

 まず、その人が過去に読んで感動し、人生の指針を与えられた本を他人に推薦するというのは、その人となりを推薦するということでもあり、人物評価にもつながる。よく女性が男性を恋人として選ぶ時の尺度として、その人の本棚にある本をチェックし、好きな映画について語らせるという方法がある。それと同じで、他人にすすめられるだけの愛読書を持ち、語ることのできる表現力を持つということは、政治に携わる者として必要な資質であろう。

 私が第一回目の読書会に推薦したのは堺屋太一氏の著『組織の盛衰』。組織論という学問分野はあるようでなかなかないものである。堺屋氏はこれを体系的に分析し、過去に盛衰した実際の組織(豊臣秀吉の組織論、帝国陸海軍、日本石炭産業、永田町)を例示しながら総合的な組織論を展開している。これは私が新日本プロレスのレスラーとして在籍した折りに、中間管理職としての立場から参考にした必携の書である。組織の在り方についてお悩みの方には是非おすすめしたい。

 政治家も哲学を磨く時代に入ったということである。

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