日朝国交回復へ
”アリの一穴”確保だ

<9月20日デイリースポーツ掲載>


 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との交渉あなどるべからず。日本はなめられている。

 日本にとって一番近くて遠い国。そしていまだに国交の回復が実現していない国。
しかし歴史をひもといてみれば、生活様式や宗教や民族性など数多くの文化が伝えられてきたおとなりさんでもあり、親しみをもって接して当然の国ではあるのだが。

 ここ数年、自然災害や農業政策の不備によって恒常的な食糧不足に陥っている。
北朝鮮から送られてくるテレビ映像では明らかに栄養失調の子どもや水害を受けてペンペン草も生えない耕作地が映されており、気の毒としか言いようがない。
ここは国連の緊急人道支援アピールにしたがって日本としても貢献したいのはヤマヤマなところ。

 だが、ちょっと待ってほしい。こと「人道」という観点に立つと日本としてもおいそれと貢献の仲間入りをすることはできない。
なぜならば、拉致(らち)疑惑、麻薬密輸事件、ニセドル札事件、日本人配偶者一時帰国問題などを抱えているからである。
北朝鮮を人道的に支援するならば、日本にある人道問題も国際的問題としてとりあげてもらい、解決しなければならないはずである。
とりわけ北朝鮮当局が認めようとしない拉致疑惑については日本の警察当局は状況証拠を含めて事実をつかんでいるのであり、この解決の糸口をつかまなければ、日本の主権は踏みにじられたままになってしまう。

 食糧援助と拉致疑惑をからめるべきではないとの意見もあり、とりあえず世界食糧計画(WFP)の要請に応じて6万トン余りの援助をすることになったのであるが、私はこれは独立国家としての日本の外交としてはなはだ弱腰であると思う。

 かたくなに日本が拒否し続けることによって日本側の諸問題を世界に発信し、解決の糸口を見つけ出す根拠になるのではないだろうか。

 ただ、日本人配偶者一時帰国問題だけは人道問題と切り離して実現しようとしている外務省の努力は応援したい。なぜならそれがアリの一穴となって日本と北朝鮮側の外交チャンネルが増えることになるからだ。この2国間の直接の交渉窓口を大切に維持し続けることこそ、やがては両国の関係改善に向けてのアリの一穴となるということだ。
確かに一時帰国には北朝鮮側から期間や日本での行動について制約がかけられてしまうという不満足な部分もある。しかし15人から20人の一時帰国者が北朝鮮に戻って行った時に日本の実状を周辺の多くの人に語るという情報伝達効果は長い目で見れば計り知れない大きなものがある。

 日朝国交回復へのアリの一穴は確保しなければならない。

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