外して気がつく
“バッジ”のバリア

<8月16日デイリースポーツ掲載>


 国会周辺もお盆休みに入った。私の事務所は13日から17日まで長期休暇。なかなかまとまった休みを取れないのが議員事務所なのだがこの時期だけは特別。事務所を閉めないと私自身が休めないこともあり、思い切って秘書にも休んでもらうことにした。

 ところが、日ごろ休み慣れていないこともあり家で猫ちゃんと2、3時間ごろごろしていたらもうあきてきた。こんな時、仕事とトレーニング以外にとりたてて趣味のないわが身をかえりみて、むなしくなり、反省をする。少しは浮世離れしたひそかな楽しみを持たないと、気がついてみれば潤いのない人生を過ごしてしまったということになるのではないかと思う。休日のすごし方については一考の余地大ありだ。

 午前中、女房をラジオ局に送っていってから手持ちぶたさ。仕方なく、ポロシャツに半ズボン姿にスニーカーを履いたままで国会へ。別に事務所に書類整理に行くわけでない。健康センターに行ってトレーニングをするためである。つくづく汗を流すことが好きなのかよっぽどほかにすることがないのか。いつも背広姿で通っている永田町に、ふだん着でやってくると意外と新鮮な発見がある。

 まず言葉遣いからして違ってくる。議員バッジを胸につけていると知らず知らずのうちに自分で言動にバリアを張っているのだろうか、それとも他人が特別視するのだろうか。ポロシャツで健康センターに入って行くと職員さんや衛視さんが気軽に「馳さん、精が出ますねェ」「奥さんのラジオ聴いてますよ」と声を掛けてきてくれるし、私も「暑いっスねぇ。何かおもしろい話でもありますか?」と笑顔で相手のふところに入っていける。議員になりたてのころは自分は庶民の代表で絶対永田町の手あかにまみれないぞと思っていたのがいつのまにか見た目も心も永田町になじんでしまっているのだろうか。こうしてたまにポロシャツ着てこっそり仕事場に来てみるのも、素のままの自分を再発見できるから良いのかもしれない。

 翌日は、やっぱりポロシャツにGパン姿で羽田空港へ。実家のある富山県へお墓参りのため。いつものようにVIPルームに入ると森喜朗代議士が、「私もお墓参りだよ。たまには馳くんも奥さん孝行しないとだめだよ」と、空港まで送りに来てくれていた女房を見つけてしばし懇談。政局を離れてこうして実力者たちは英気を養い、秋の人事に向けて知恵をたくわえているのだろうか。

 それにしても私服姿でいると必ず「このまえプロレス見ましたよ」と声を掛けられる。よっぽど議員バッジって話しかけ辛い雰囲気があるのだろうか。

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