『心にもないこと
いうんじゃねぇー』

<4月22日デイリースポーツ掲載>


 軍用地特措法改正案の国会で、心にズシンと響いたあの言葉

 閉会から20分ほど遅れて本会議場に足を踏み入れると、そこにはもうすでに絶叫と悲鳴の渦であった。特措法改正案についての与野党の賛成、反対討議が行われて、最後に採決が行われて参議院においても圧倒的多数によって可決。成立することが分かり切っていただけに、わたしはいったい何事が起っているのか瞬時には判断できなかった。

 各党の議院運営委員会理事たちが血相を変えて外に出る姿とすれ違ったので、議場が混乱して収まりがつかなくなっているのだな、とは分かった。

 正面壇上に目を移すと、斎藤十朗議長、演説途中の野間議員(愛媛県・自民党)の視線が議場ではなく、傍聴席を見上げる形になっていた。各党の議員のほとんども後ろを振り返り、怒りと戸惑いのこもった表情で騒乱の傍聴席を眺めていた。そこに私が入っていったものだから「馳さんちょっと上に行って鎮めてきてよ」と小声で耳打ちする人もいた。いくら私でも議場でひと暴れはできない。

 自分の議席に座り、隣の畑恵議員に説明してもらって、ようやく事態を把握できた。
 野間議員が駐留軍用地特措法改正案に賛成の討議を始めた途端、傍聴席にいた反対派支援者らが叫び始めたのだそうだ。
 混乱は15分ほど続いた。

 「沖縄県民を見捨てるのか」「沖縄差別反対」「それでも国会議員かー」「ギャー」「痛い痛ーい」「何すんのー」「やめてー」

 とまあ、興奮が興奮を呼び、極度の錯乱状態。
 議長命令より、衛視らに強制的に退場させられているのだが、反対派によるこのパフォーマンスは確信犯であるらしく、あらん限りの抵抗。結局、威力業務妨害の罪で21人が逮捕されるという不名誉な事件となってしまった。

 野間議員の次に、社民党の照屋寛徳議員による反対討論が控えていただけに「おまえらが騒ぐと照屋議員に恥をかかせることになるじゃないか。せめて照屋さんの意見聞け」と怒鳴り返す社民党議員もいたほど。良識の府を汚された怒りとともに、沖縄県民に対する後ろめたさの気持ちもあって、議員たちもどう対処して良いのか言葉を失ってしまったという雰囲気。

 平成会の鈴木正孝議員が、「沖縄県民のつらさを思うと....」と演説すると、すかさず「心にもないこというんじゃねぇー」と叫んだのは傍聴席に残っていた妙齢の女性。もう、議場はなんでもあり状態。

 およそ1時間の本会議。結局、改正案は圧倒的多数で可決。社民党の及川一夫政審会長も賛成。国益は守れた。しかし「心にもないこと言うんじゃねぇ」の言葉は耳に重く残った。


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