自社さのワク組

『目的でなく手段』

<4月15日デイリースポーツ掲載>


 参院自民の現状を考慮した森自民総務会長発言

 橋本首相と小沢新進党党首がトップ会談を行った翌日、衆議院院内において象徴的な二つの光景に出くわした。

 その日は午後から、駐留軍用地特別措置法(特措法)改正の趣旨説明と代表質問が本会議場で行われていた。

 この四月から自民党石川県支部連合会の会長代行(会長は森喜朗氏)に就任した私は、役員の県議数人と院内の幹事長室に就任あいさつに出向いた。

 出入り口では鈴木宗男副幹事長が電話で忙しげに外部に連絡を入れていた。中には加藤紘一幹事長と太田誠一筆頭副幹事長、野中広務幹事長代行ら新進党への工作部隊が数人と話し込んでいた。

 その話し相手とは、石破茂、笹川堯、岩永峯一の三氏。

 このメンバーで何が話し合われていたかは一目瞭然。自民党復党に向けての最終調査である。新進党を脱藩し、自民党に戻りたい人は後を絶たない。来るものは拒まずが基本ではあるが、昨年の総選挙で自・進は激しくぶつかり合った経緯があり、選挙区調整がつかないことには、「はいそうですか」と受け入れることのできない事情があるわけだ。

 保個連合工作もいよいよ本格化してきたなと思いながら、その密談をながめていたら、傍らのインターネットのホームページがカタカタと動きはじめた。

 共同通信社のホームページ(HP)である。自民党総務会長の森氏の発言として、掲載されたばかりのコメントが動いていたのであった。

 「自社さの与党ワク組は政策遂行のための手段であり、目的ではない」
と断言してあった。

 自社さ推進派の党執行部の発言としては、いささか保保連合派寄りの物言いだなぁ、と思い、後でその発言の真意をうかがってみた。

 「あれは一言付け加えるのを忘れたんだよ。自社さのワク組みも、保保のワク組みも、と言いたかったんだ。総選挙で過半数を国民から与えられなかったのが自民党の現実だ。けれども第一党として引き続き主体性を持って国家国民の安全と安心と平和とを守って行かなければいけないよ、との声でもあるんだ。国民の願いを実現する目的のためには、政策に応じて必要な味方を確保する努力をするのはあたりまえのことだろう、馳くん」

 これはおそらく、逆立ちしても過半数を確保できない参議院自民党の現状を考慮しての発言でもあったのだろう。ここが連立政権の政局のアヤであろう。

 特措法改正以後の政局が、自民党を軸にして液状化しつつあることは、疑いようもない。


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