新しい生き方見せた

野茂、イチロー


(平成7年12月25日掲載)



 
 この連載も今年はこれが最後。先週は阪神大震災、オウム事件について書いたが、本当に今年は暗く、悲しい事件が多かった。沖縄での少女に対する米兵の暴行、現役政治家が逮捕されるまでに発展した2信組問題、大和銀行の不正は恥ずかしいの一言だ。参議院も当選した私にとってはいい出来事だが、投票率は 44.52%と史上最低で政治不信は頂点に達しつつある。

 そんな中で、日本人の心を捕らえたのが野茂とイチローの活躍だろう。野茂の米大リーグ入りの過程−近鉄との契約のもつれ、密約のうわさーについて、とやかくいう人がいる。自己主張を通す野茂の生き方がよく表れていていいじゃないか。義理人情にとらわれない契約のあり方はプロスポーツ選手に一つの方向性を与えた。プロなんだから、こだわっていい。

 米国での野茂はつらかったと思う。私もプロレスの武者修行で米国、メキシコなどを回ったが、言葉、食事、習慣と何から何まで日本と違う。当たり前だけどね。特に、言葉が通じない苦しさといったらなかった。グランドに出る前にいろいろなことと戦わなければならない。多くの困難に負けず、野茂は成功した。素晴らしい偉業だ。

 イチローは、プロスポーツ選手のあり方を教えてくれた。金があれば外車に乗り、家を買い、いい女を連れ回しちゃらちゃらしているやつが多い。スポーツマンはそうじゃない。私もプロレス時代は酒も飲んだし、女の子にもてた。ただ、一番大切なことは己の技術を磨くことだと思っていた。本当にそう思っているのかと聞きたくなる選手が目につく。

 イチローをみているとすがすがしい。契約更新も一発だしね。プロは自分の技術を磨くことが第一、そして、あくまで自然体でさわやかに、が真のスポーツマン像だと思う。

 イチローはオリックス土井前監督に打撃フォーム改造を指示されたが、拒否したという。野茂もトルネード投法を大リーグでも貫いた。自己主張し、成功した。忘れていけないのは、実力があったから通用したということだ。

 自己主張する以上は自己責任でもって仕事をしなければならない。野茂は実力がなければシッポを巻いて逃げなければならなかった。イチローだって振り子打法で結果が出なかったら2軍暮らしだ。

 年功序列が通る日本社会。能力至上主義で野茂、イチローが明るい話題を伝えてくれたことは、これからの日本人の生き方を教えてくれた。

イチローの 無欲が開く 春の花

 来年もヨロシク!


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