人の痛みがわかる

政治を


(平成7年10月23日掲載)



 米兵による小学生女児暴行事件に端を発した沖縄住民の怒りは21日、住民8万5000人以上を集めた決起集会でピークを迎えたようだ。この集会が日米安保条約、地位協定について考えるエポックメーキングになってほしいと思っている。

 ・・・・というものの、だ。地位協定見直しの是非を中心とした国会での論議は本質を置き忘れているんじゃないか。地位協定と少女暴行は切り離して考えるべきだ。なぜ事件が起きたのか、2度と起こさないためにはどうするのか、そのためには米国側にどのような申し入れをすればいいのか、賠償問題は、といった議論が真っ先に行われるべきだった。

 私が所属する参議院の「国際問題に関する調査会」では、問題の本質を見極め対応してほしいと申し入れをしてきた。が、地位協定見直しや大田昌秀沖縄県知事の米軍用地強制使用手続きの代理署名を拒否した問題が前面に出て、暴行事件自体が置き去りにされてしまった。本質を欠いたと言わざるを得ない。

 地位協定が見直されれば暴行(レイプ)事件が減るだろうか。そうは思わない。結局はモラルの問題になる。米国本土で厳しい教育、訓練を行なっていない若い、エネルギーがあり余っている兵士が何を起こすか十分想像できる。沖縄ではこの種の事件は過去たくさんあった。沖縄住民の怒りは、地位協定以上に米兵のモラルのない行動に対するものだ。新兵をしっかり教育し、質を向上させてから日本に送り込んでくれ、と米国に強く主張すべき。

 モラルといえば、防衛施設庁長官の「首相はバカ」発言(本人は発言を否定)も官僚のモラルが問われる。この人は昨年も「沖縄は基地と共生共存する方向で変化してほしい」と発言し、沖縄県民のひんしゅくを買った。施設庁長官に限らず、政治家や官僚に今回の問題を自分のこととして捕られていた人はどれくらいいただろう。痛みを体験したことのない人間は、自分がそのような立場になるまで気づかない。痛い思いをした人ほど、人の痛みがわかる。これはプロレスラーとしての経験でもある。いまこそ全国民が沖縄県民の声に耳を貸し沖縄県民の立場に立って考えるべきだ。

沖縄の 情けの霜を とかす

 今、本土の人間の代わりになって基地を受け入れてきた沖縄県民の心に霜が降りている。その霜を政治の力によって、海のごとく大きな心で解かしてあげてほしい。そんな思いを込めて。


 

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