今、求められる

政治家の姿


(平成7年9月25日掲載)



 自民党総裁選は終わった。「大きな政治」はどこでも論じられるし、前回このコラムで開口一番、「勉強中」を強調した1年生議員としては、もっと身近な問題に目を向けてみたい。リングを見つめる小さなファンたちの熱い視線と声援に燃えないレスラーはいない。もし、政治家がこんな経験をしたら無上の喜びを感じるだろう。

 政治家をもっと身近で見たい、もっと生の声を聞きたいと真剣に願う少年だっているんだ。私もそうだった。うそではない。

 地元の石川県川北町の西田外雄さん方の水田で「稲刈り」のお手伝いをさせてもらった。17日、台風12号の影響で朝から雨。コンバインが使えず、鎌(かま)を手にした作業となったが、約2時間、心地よい汗だった。

 7月の参院選で「法案を作るとか、国のための活動は、いきなりはできないでしょう。ただし、私自身が皆さんのもとに行って要望を聞いたり、お手伝いすることがあれば、当選後すぐに行ないます」と公約。私はこれを実現即可能な「小さな公約」と名付けた。川北町での遊説の際、要望されたのが「稲刈り」の手伝いだった。

 当選した翌々日には県庁舎の廊下掃除。モップで1階から3階まで1時間かけて磨き上げ、県行政の先頭にたっている人々の意見を聞いた。内灘町では金沢医科大学のナースセンターで1日夜勤。10時間以上、立ちっぱなしで新生児の世話をする看護婦さんの姿に言葉が出なかった。厚生省の書類だけでは分からない実態がそこにはある。近く自衛隊の1日入隊も経験するつもりだ。

 批判の声もある。「ただの人気取りじゃないか」そうだろうか。入れ知恵され強制的にやっているのなら、人気取りといわれても仕方がない。が、無理に要望を出してもらっているわけではないし、市町村側からやらされているわけでもない。「小さな公約」は遊説中に自然発生的に生まれたものなのだ。

 現場では多くの人が声をかけてくれ、たくさんのことを知ることができた。看護婦さんの実態、公務員の意識、県民の政治への期待....。現場に行って汗を流し、難しさ、つらさを知ってこそ、要望を真摯(しんし)に受け止められる。「小さな公約」から大きな実がなることもあるだろう。

 政治家の姿を一般国民が身近に見るのが選挙の時だけでは寂しいじゃないか。子供のころ私が望んだ政治家こそ、今求められているのではないだろうか。そうでしょう、橋本新総裁!

農民の 心も実る 稲田かな


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